過去に父が心臓血管外科で数時間の手術を受けました。
ICU(集中治療室)で面会できるので会いに行こうとしたら、同じ病院で別のフロアに入院中の母から
「父さん、機嫌悪いからね」
「なんでやろ?」
「わからんけど、父さんとこ行こか」
色んな管が身体と繋がっている状態で話もロクにできないだろうと声掛けしたら
「天井にごっつい蜘蛛が~。ほらほら~」と指差す父。
「いないって!」と、点滴の袋を点滴棒にぶら下げて父の様子を見に来た母。
「父さん、殺虫剤ないわ~。ごめんやで~」
「プッ」(看護師)
病人が病人を見舞い、ノリツッコミをやらかす、なんともいえない光景。
「大丈夫?父さん?」
訳の分からないことを言うのが不安でしたが、
こういった「せん妄(われを忘れて意味不明のことを言い出すこと)」は術後などで経験すると医療スタッフから聞きました。
退院前に再度、父へ話を聞いてみると
「おかしかった(異常だったと認識)」
自分が日常では無い状態なのを分かっているのが、凄い。
「三途の川、見えた? 花畑は?」
「花畑はあったあった。川はわからん」
「なんだ、川まで辿り着いてないん?良かったやん」
機嫌が悪かったのも自分が自分で無い状態を分かっていたからなのかなぁと。
さておき
亡くなる直近、過去のいつかは分からないが自分が生まれ育ったところのことを一方的に話してくるので、
「んで?どうしたの?」と聞く。
話も四方八方に飛びまくって、傍から聞いていると何かヒントになることが分かるんじゃないかと言うことに否定せず、それで?それで?と聞く。
最後に「お母さんは?」
死んだはずだよ おっ母さん。既に10年以上前に亡くなっている。
けど
「家にいるから、安心してよ」と返す。
「そっか」
そこから話の展開があるかなぁと期待したのですが特に何も無しで、一方的に話を聞いていくうちに、せん妄が和らいできた様子。
意思の疎通がちょっとはできてきたので、ホッとしました。
母親が末期癌、お迎えが近かった頃のせん妄に付き合った時は「おわかりいただけただろうか」系の説明し辛いいことを経験。
それに比べたら、父のぶっ飛んだせん妄の内容は、分かりやすく現実的。
せん妄中に無理矢理、正気に戻そうとしても無理なので、訳が分からなくても言うことをきちんと聞くと落ち着くこともあるようです。